売る前に、名前の話から始めた
才谷屋が Ninja Deterrent™ を海外に出そうとしたとき、私たちが最初に手をつけたのは、サイトでも出品でもありませんでした。まだ一つも売れていない、無名のブランドの名前を、海外で守りに行くことでした。
2024年の初め、個人事業として創業する前の段階で、国際的な商標の出願に踏み切りました。売上はゼロ。反応があるかどうかもわからない。そんな時期に、名前を守る手続きから始めたのです。
このコラムは、その順序をなぜ選んだのかという、私たち自身の話です。制度の解説ではありません。実際どうすべきかは、後で書くとおり専門家に相談すべきことです。ここでは、一つの小さな会社が何を考えてそう動いたかを、正直に書きます。
正直、後回しにしたかった
最初に白状すると、名前を守る手続きは、気持ちとしては後回しにしたいものでした。
売り場もない、注文も入っていない段階です。目の前には、作るべきサイトも、撮るべき写真も、整えるべき物流も、やることが山積みでした。そのなかで、まだ存在しない売上のために、名前を守る費用と時間を先に使う——正直、優先順位を上げにくい作業でした。
それでも先にやったのは、「これだけは後から取り返せない」と感じたからです。
「後から」では遅い、という感覚
サイトは後から何度でも作り直せます。デザインが古くなっても、載せ替えればいい。物流も、やりながら組み替えられます。
けれど名前は違う、と思いました。もし製品が海外で少しでも注目されたとき、その名前を先に他の誰かに押さえられてしまったら。想像すると、それだけは避けたいと感じました。自分たちが育てたブランドの名前で、自分たちが動けなくなる——そういう事態だけは、起こしたくなかった。
確証があったわけではありません。ただ、「取り返しがつくもの」と「つかないもの」を並べたとき、名前は明らかに後者だと感じた。それが、順序を決めた理由でした。
自分たちだけでは、とても無理だった
実際に手続きを進めてみて、すぐにわかったことがあります。これは自分たちだけで判断できる領域ではない、ということです。
聞いたことのない専門用語がいくつも出てきました。どの国を対象にするか、どういう区分で出すか、判断が必要な場面が次々に現れます。そのたびに、素人の思い込みで進めるのは危ういと感じ、専門家の力を借りることにしました。
結果的に、それが正解でした。もし自分たちだけで進めていたら、大事なところを取りこぼしていたと思います。餅は餅屋、という当たり前のことを、このとき痛感しました。
やってみて、今思うこと
正直に言えば、この一手が具体的な売上を生んだわけではありません。名前を守ったからといって、翌日に注文が増えるものでもない。地味で、すぐには成果の見えない投資です。
それでも、やっておいてよかったと思っています。土台を先に置けたという安心感が、その後の動きを支えてくれました。サイトを作るときも、広告を出すときも、「名前は守ってある」という前提の上で動ける。この足元の安定は、数字には出ませんが、確かに効いていました。
這ってでも最初にやるべきことがあるとしたら、私たちにとってはこれでした。
これから海外に出る方へ
もしあなたが今、日本の良いものを海外に出そうとしているなら、私たちの経験から一つだけお伝えできることがあります。サイトや出品より前に、名前をどう守るかを一度考えてみてください。
ただし、具体的にどうすればいいかは、私たちがここで語れることではありません。国や製品によって最適な進め方は変わりますし、それは弁理士など専門家の領域です。私たち自身も、専門家に頼ってはじめて前に進めました。
才谷屋がお手伝いできるのは、その手前の部分です。「海外に売りたいけれど、何から手をつければいいかわからない」——そういう段階で、自分たちの経験をもとに、一緒に順番を考えることはできます。